原田要さんの話(5)紫電改よりも零戦21型が一番だった
篠原Q、原田さんは海軍のほとんどの飛行機にお乗りになっていますね
ええ、雷電や紫電改も乗ったし、みんな乗りました
大型の九六陸攻も乗っています。
Q、雷電や紫電改は如何でしたか
雷電だめ、紫電改もだめですよ。
ゼロ戦だって52型だの丙型だの、みんなダメですよ。
アメリカのB-29には届かない。向こうが1万メートルで
紫電改が後ろにつくとロケットを発動しちゃう。サーっと置いていかれる。
それで最後にB-29に対処するにはこれしかない(秋水の模型を手に取る)
この秋水はロケット機ですから1万メートル迄3分。1万4千メートル迄でも
4分程度で上がっちゃうんです。それで30ミリを両翼に備えています。
これなら絶対に大丈夫、B-29なんかへっちゃらだというんです。
そのかわりパイロットの養成が大変で、その頃になると、アメリカの
グラマンが攻撃に来ていたから内地では訓練できないから、霞ヶ浦から
千歳へ配属になって、パイロットの養成をしなさいと言われました。
Q、プロペラの飛行機で一番良かったのはなんですか
プロペラの飛行機で一番良かったと思えるのは私は最終的に
零戦の21型。佐伯航空隊で初めて乗りました。
それまで九六式艦上戦闘機だったのですが
この九六戦も堀越さんのグループが開発した戦闘機ですけれど
九六戦は行動半径が短い、攻撃兵器が貧弱でした。
Q、ゼロ戦(21型)を佐伯航空隊で初めてご覧になって如何でしたか
初めて見た零戦は格好良かったですね。私がこれに乗れるのかと。
九六戦と違って、ゼロ戦は随分大きいという印象を受けました。そして
脚が入ってしまう。骨組みが強化してありますし翼内から20ミリという強力な
弾が撃てる。加えてプロペラの圏内からは九六戦と同様に7ミリ7も撃てる。
300リッターの増槽タンクの他に翼内、胴体に燃料をたくさん積める。10時間
以上飛んで大型機を掩護できるんです。エンジンはダブル式になっている。
これが出来てね、すごい飛行機だなあ、と思っていたんです。
Q、ゼロ戦と九六戦を乗り比べて違いましたか
ええ、だから操縦が重くて大変だろうと思って、初めてゼロ戦に乗ってみた。
そうしたら誠に軽い。九六戦より自由がきく。素晴らしい飛行機だなあ、と
思いました。九六戦と全然違う。
Q、21型が一番良かったのですね。
日本の零戦として一番長い間、戦ったのが21型だと思います。
守る、攻める、安心感、三拍子揃っていた。
初恋の飛行機ではないかな。
素晴らしい飛行機だなぁ。これがいわゆる一番
武士の気持ちに近い、そのまんま合う飛行機だと思いました。
私達はゼロ戦に乗っていれば「絶対に負けないんだ」という自信を
持っていました。そして、そのゼロ戦に掩護される爆撃機や攻撃機も
「ゼロ戦がついているなら大丈夫だ」という安心感がありました。
ただ、世界中からどんなに驚かれるような零戦でも最終的には悲劇になる。
アメリカの方もF4FがF6Fに、どんどん新鋭機が開発される。飛行機だろうが
人間だろうが最初の功績に甘んじていると大変な事になります。
ゼロ戦はその後、エンジンの馬力を上げたり翼を短くしてみたり、排気管を
単排気管にしてみたりと、少しずつ良くはなっているんだけど
21型が一番良かったですね。
だから最終的に私が飛龍(※1)から飛び上がったのも21型ですよ。
飛龍の飛行甲板で、最後にひとつ寄せ集めの飛行機ができたんです。
私は飛行長のすぐそばで助手をしていたからすぐお前上がれって言われて
ああ、今頃こんな時に、よく21型あったなと。結局は信頼があったから
最後に寄せ集めの飛行機が21型で出来たんじゃないかなと。
恵まれています。
つづく
※1飛鷹かも?
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