2019年6月 8日 (土)

永井さんとスカイツリーと

Imgp2074

ペリリューなどの、ジャングルを最初は一人で歩いていました。
当初は、それで「あなたのやっていることは非常に危険だから、
必ず相棒を見つけろ」とお叱りをいただきました。だから今はもう
一人では行きません。
 
それで、話を戻すと、当初はジャングルを一人で歩いていますでしょう。
私、全く、霊感も、恐怖感もないのですけれど(呑気でしょう)
立ち止まって、ペッドボトルのフタを開けてごくごく飲んでいると
(休憩している時間はとても静かです)
なんだか、後ろめたいんです。玉砕の島で、みんな水を求めて
亡くなっていったのですから。私だけ、こんなに水を
独り占めしていいのかと。
 
一度、ペリリューの宿舎で居合わせた観光ダイバーに
「日本兵の幽霊が出るらしいですよ」と言われて、なんだか頭にきたので
「出るなら会ってみたい」と言ってやりました。
 
さて、話は現代になります。平成最後の日、
ペリリュー戦の最後のおひとり、
永井さんを車で浅草~茨城をお送りしました。同行者が
  
「永井さん、あれがスカイツリーですよ。冥途の土産
によく見ておくといいですよ」
 
この人、仲が良いので、永井さんにまった遠慮がございません(笑)
もちろん、永井さんは極めて崇高なるサムライですし、
戦争体験もいいんですけど、それをいったん忘れると、
すごくユーモアのある方で雑談がめちゃくちゃ面白いんです。
時間のあるとき、たくさん書きたいです。
  
「ほう、スカイツリー、いくらぐらいで入れるんかね?大相撲より安い?」
 
今回の講演会はお寺さんでした。
お寺さんの掛け軸を指でザラザラ触りながら、
 
「こりゃあ、コピーかな?この雲は子供みたいな絵だね。わたしだって
いくーらか絵ぐらいはわかるんだかんね」
  
「あの、ちゃんとしたお寺さんなので、コピーはいくらなんでもないかと・・・。
触っちゃダメです。ほら、ご住職が戻ってくるから!」
 
永井さんと一緒にスカイツリーを眺めて、
とても良い思い出ができました。
 
「永井さん、明日から令和ですね」
 
いつまでもお元気で。

Z旗掲げし金曜日

Dscn3528

単行本第二巻作業締め切りリミットラインが迫っている。
今回の漫画は奇数ページ、
つまり右ページで終わっているので、左側が白紙になる。
そこに差し込むデザインを考えなければならない、
とりあえずアタリ(印刷用語で仮の画像)を入れたところで
作業が止まってしまう。
  
篠原
「うわああ、この余った左側ページ、どうしたらいんだ・・・
こんな感動的な結末で」
 
ヤスさん
「適当でいいですよ。雲の絵とか」
 
篠原
「いやいやいや、それは無理!!これに見合うデザインを
考えないと」
   
金曜日も午後。
クリエイター全員で締め切りという名のモンスターと戦う。
 
篠原
「うーん、うーん、桜井、締め切り間際はものすごい圧迫感というか、
泣きそうにならない?」
 
桜井
「いやー、ならないですよ。逆にハイテンションですね。」
 
みんな強い。僕が一番、情けない。

2019年6月 6日 (木)

萱場製作所

43b22b323d

ペリリュー遺骨収容の折、偶然見つけた
ゼロ戦のショックアブソーバ(脚の一部)。
ロッド部分は70余年経過した今でも光り輝いていた。
 
ちなみにKAYABA(萱場製作所)製である。

飛行機の絵柄打ち合わせ

Dscn3532
佐藤ヤスと桜井と私、三人で
「疾風」の模型を使って、漫画で使う
絵柄の打ち合わせです。分担して描いてます。

2019年6月 5日 (水)

今日はミッドウェイ海戦の日

Dscn3531

今日はミッドウェイ海戦の日。
 
蒼龍直掩のゼロ戦隊は
低空から進入するTBDデバステーター雷撃機を全て撃ち落として
艦橋からは拍手があがっていた。
 
デバステーターの犠牲があって
上空ががら空きになっていて、ドーントレスが
「蒼龍」に向かってダイブする。

653pxaerial_view_of_the_japanese_ai

蒼空はるか第9話「フライトレス・バード」予告

2 

10

蒼空はるか第9話「フライトレス・バード」
10話(タイトル未定)と合わせて、間もなく単行本第二巻出ます。
最後の編集作業中です。
発売日が決まりまりましたら、
こちらでお知らせします。

実話

模型製作をお願いしている小島さん。
講演会の折、非常にお骨折りをいただきまして
心より感謝申し上げます。
 
「制作中に小さな部品をピンセットで弾いてしまい、部屋中探しまわったんですが、
どうしても、見つからないんです。」
 
「わー、それは難儀でございましたね」
 
「ええ。しかし、これが皮肉なことに諦めた頃に見つかるものです。
部品のほうから戻ってきました」
 
「ええ、どういうことですか」 
 
「ゴロウの背中にくっついて、家中を歩き回っていたんです」
  
「ワンちゃんがいるとは存じ上げませんでした」

2019年6月 4日 (火)

ショートコント

昔のサーキットのクルマ仲間に偶然、会う。
 
「あたし、もう57になったよ。ババアだよ」
  
「こらあ!!!!自分でババア言うんじゃない!」
クルマは?」
  
「結婚したら全然乗らなくなったのよ。あるけど駐車場に置きっぱなし」
 
「それはダメだ。タイヤつぶれておにぎり型になるらしいぞ!」
  
「うーん、そうなの?そんなタイヤ、見たことないけど。
ねえねえ、また、今度、走ろうって言ってよ」
 
「うん、わかった。機会があったらね。じゃあ、サヨナラ」
 
「さようならじゃないでしょー。またね、でしょ。」
 
「やだ!そんな、女みたいな挨拶!」
 
「うーん、もっとのんびり生きなよ。昔みたいな直ちゃん、
どこいったのさ?」
 
「ちゃんといるよ。15年前のここに。いつでもいる。いつでも会える」
過去も未来もぜんぶ含めて溶けちゃって自分だから。
過去だけ振り向いてると辛いだけだよ」
 
「なにそれ。言ってること全然わかんない。」
  
「わかった。じゃあ、シンプルに言い方を変える」
 
「うん。なに?」
 
「ババアとか二度と聞きたくない」

青いピンヒール

いま、仕事がなかったら描きたいもの。青い靴。
9センチくらいの華奢だけどとても美しくて
綺麗なピンヒール。
 
彼女はサーキットで、少し褪せた、でも悪くない、言い方だと、
レースクイーンをやっていた。
青い衣装でピンヒールを履いていた。
 
今思えば、
僕は、彼女のプライベートを知る
数少ない一人だったと思う。
 
なんでか、わからないけど、僕は女性の友達が多くて、
でも、安心していいのは、そこから先へ
進むことはほとんどないから。
自身がそれを望んでいなかったし、
 
「女の子ばかり、それも綺麗な子が友達で」と言われるけれど
それを言われて、ちょっと考えたときに、
何かやだ、友達だし、それはなんだか気持ち悪い、とさえ
感じるものがあるからなのかな。
うまく言えないけれど。どんな綺麗な人でも。
よくもわるくもそれはピュアに考えるならば
自身の魂を入れておく器でしかない。
  
だから、一度「自分も女だったらよかった」
と関係あるような、ないようなことを漏らしたことがある。
いまでもその言葉が適切だったかは謎である、だけど
答えを出そうとも思わない。謎で終わることはたくさんある。
 
前置きが長くなった。  

彼女の休日、
履くのは、専ら薄い靴。
小石さえ踏んだら痛そうな薄い薄い、靴下みたいな
サーキットシューズ。
 
休日の彼女がレーサーそのものだったのは
だれも思いもしないだろう。
 
彼女の操る真っ白のクルマは決勝レースで
最もタイトな第3コーナーに儚いくらいのスピードで突っ込んでいく。
後輪を僅かに縁石に乗せて、跳ねると、踵を返すようにノーズを
コーナー出口を向けて、視界から消えてゆく。
  
ラップを重ねるごとに、どんどんポジションを上げる。
スリップストリームに入って、テールトゥノーズ。
そこから脱して、横に飛び出すと、
クルマはよろめくに程に大きな風圧を受ける。
前のクルマはコーナー手前でプレッシャーに負けて
だいたいが、道を譲る。
 
彼女の走りは強かで、
「使えるものはなんでも使え」と語りかけるようだった。
速かった。いつかクルマで死ぬんじゃないかと覚悟してた。 
 
次。
 
彼女の休日、
専ら、読書。
僕は、彼女の彼女の薦めるものは片っ端から読んだ。
 
読んで共感したところ、逆に理解できなかったところも
正直に読書した感想を書いて手紙を書くと、
3倍くらいの量の返事が来た。悔しいというか、
愚敬の念というか、とにかく恐れ入った。
 
いまでも我が家には沢山の本がある。
 
ひとつ思い出したのは、
僕が単行本の装丁のデザインの話を手紙で書くと
「装丁も作家の表現だから大切にしたいけど
どうしても場所を取るので、
一度だけ眺めて、文庫本を買っている」と丁寧に
書かれた返事が来た。
 
あと、思い出したことは
 
適当なファミレスに行く。彼女は
注文を取る前から、マイペースにメイクを直しに行って、 
お冷やのグラスが水滴でいっぱいになるころ
戻ってきて、メニューを逆さまにしたままニコニコして、
しばらく眺めて、ようやく気がついて
「あっ」と、漏らすように言って、元に戻している。
それだけである。
 
ファミレス、といても
あまり食べている姿を覚えていない。
 
彼女はあまりしゃべらないで
ニコニコしているだけだった。たまに
ひとつ、ふたつ、短い言葉をなんとかひねり出して、
あとは遠慮するように、窓の外を見ている。
 
そっちを向くと、長いまつ毛だけが印象的で
瞳の色はわからなくなった。
 
彼女が挨拶もなく、いきなりこの世から去ったのは
土曜日の朝だった。26歳だった。 
 
記憶が断片的で、よく憶えていない。
最初は電車か何か乗り合いの乗り物の中で
それを知ったような気がする。
   
彼女のSNSは年齢を重ねる。見ると辛い。 
 
それからしばらく経って
 
大人数での飲み会。
こういう場は苦手だ。お向かいの年輩の先生が
注文を取りに来た女性の店員さんに
「加奈さんっていうの。この名前の人は美人しかいないねえ」
と声をかけている。まったくもう、みんなに言ってるのかなー。
でも、先生はこれが常なんだろうし、言われる加奈さんも
けっこう常なんだんだろうな、と思った。
(あっ、先生って書いちゃった)
 
この話は直接は関係なくて
書きたくなかったんだけど、
これがあったから、
フラッシュバックした。
 
そう、彼女の名前だったから。
 
彼女はあまり食べなくて、どちらかというと
必死にスプーンで何かを口に運んでいた気がする。
 
教えてもらったたくさんの本からもらった知恵が
今の僕を、おそれおおくも生かしている。
 
青いピンヒール、特別に描きたいのは、
僕にとっては三つのテーマがあって、
儚さと美しさと強さの象徴だからだ。

永久欠番


YouTube: 「永久欠番」中島みゆき/カバーby前田泰孝(Yasutaka Maeda)

『永久欠番』ありました。