2019年6月 4日 (火)

ショートコント

昔のサーキットのクルマ仲間に偶然、会う。
 
「あたし、もう57になったよ。ババアだよ」
  
「こらあ!!!!自分でババア言うんじゃない!」
クルマは?」
  
「結婚したら全然乗らなくなったのよ。あるけど駐車場に置きっぱなし」
 
「それはダメだ。タイヤつぶれておにぎり型になるらしいぞ!」
  
「うーん、そうなの?そんなタイヤ、見たことないけど。
ねえねえ、また、今度、走ろうって言ってよ」
 
「うん、わかった。機会があったらね。じゃあ、サヨナラ」
 
「さようならじゃないでしょー。またね、でしょ。」
 
「やだ!そんな、女みたいな挨拶!」
 
「うーん、もっとのんびり生きなよ。昔みたいな直ちゃん、
どこいったのさ?」
 
「ちゃんといるよ。15年前のここに。いつでもいる。いつでも会える」
過去も未来もぜんぶ含めて溶けちゃって自分だから。
過去だけ振り向いてると辛いだけだよ」
 
「なにそれ。言ってること全然わかんない。」
  
「わかった。じゃあ、シンプルに言い方を変える」
 
「うん。なに?」
 
「ババアとか二度と聞きたくない」

青いピンヒール

いま、仕事がなかったら描きたいもの。青い靴。
9センチくらいの華奢だけどとても美しくて
綺麗なピンヒール。
 
彼女はサーキットで、少し褪せた、でも悪くない、言い方だと、
レースクイーンをやっていた。
青い衣装でピンヒールを履いていた。
 
今思えば、
僕は、彼女のプライベートを知る
数少ない一人だったと思う。
 
なんでか、わからないけど、僕は女性の友達が多くて、
でも、安心していいのは、そこから先へ
進むことはほとんどないから。
自身がそれを望んでいなかったし、
 
「女の子ばかり、それも綺麗な子が友達で」と言われるけれど
それを言われて、ちょっと考えたときに、
何かやだ、友達だし、それはなんだか気持ち悪い、とさえ
感じるものがあるからなのかな。
うまく言えないけれど。どんな綺麗な人でも。
よくもわるくもそれはピュアに考えるならば
自身の魂を入れておく器でしかない。
  
だから、一度「自分も女だったらよかった」
と関係あるような、ないようなことを漏らしたことがある。
いまでもその言葉が適切だったかは謎である、だけど
答えを出そうとも思わない。謎で終わることはたくさんある。
 
前置きが長くなった。  

彼女の休日、
履くのは、専ら薄い靴。
小石さえ踏んだら痛そうな薄い薄い、靴下みたいな
サーキットシューズ。
 
休日の彼女がレーサーそのものだったのは
だれも思いもしないだろう。
 
彼女の操る真っ白のクルマは決勝レースで
最もタイトな第3コーナーに儚いくらいのスピードで突っ込んでいく。
後輪を僅かに縁石に乗せて、跳ねると、踵を返すようにノーズを
コーナー出口を向けて、視界から消えてゆく。
  
ラップを重ねるごとに、どんどんポジションを上げる。
スリップストリームに入って、テールトゥノーズ。
そこから脱して、横に飛び出すと、
クルマはよろめくに程に大きな風圧を受ける。
前のクルマはコーナー手前でプレッシャーに負けて
だいたいが、道を譲る。
 
彼女の走りは強かで、
「使えるものはなんでも使え」と語りかけるようだった。
速かった。いつかクルマで死ぬんじゃないかと覚悟してた。 
 
次。
 
彼女の休日、
専ら、読書。
僕は、彼女の彼女の薦めるものは片っ端から読んだ。
 
読んで共感したところ、逆に理解できなかったところも
正直に読書した感想を書いて手紙を書くと、
3倍くらいの量の返事が来た。悔しいというか、
愚敬の念というか、とにかく恐れ入った。
 
いまでも我が家には沢山の本がある。
 
ひとつ思い出したのは、
僕が単行本の装丁のデザインの話を手紙で書くと
「装丁も作家の表現だから大切にしたいけど
どうしても場所を取るので、
一度だけ眺めて、文庫本を買っている」と丁寧に
書かれた返事が来た。
 
あと、思い出したことは
 
適当なファミレスに行く。彼女は
注文を取る前から、マイペースにメイクを直しに行って、 
お冷やのグラスが水滴でいっぱいになるころ
戻ってきて、メニューを逆さまにしたままニコニコして、
しばらく眺めて、ようやく気がついて
「あっ」と、漏らすように言って、元に戻している。
それだけである。
 
ファミレス、といても
あまり食べている姿を覚えていない。
 
彼女はあまりしゃべらないで
ニコニコしているだけだった。たまに
ひとつ、ふたつ、短い言葉をなんとかひねり出して、
あとは遠慮するように、窓の外を見ている。
 
そっちを向くと、長いまつ毛だけが印象的で
瞳の色はわからなくなった。
 
彼女が挨拶もなく、いきなりこの世から去ったのは
土曜日の朝だった。26歳だった。 
 
記憶が断片的で、よく憶えていない。
最初は電車か何か乗り合いの乗り物の中で
それを知ったような気がする。
   
彼女のSNSは年齢を重ねる。見ると辛い。 
 
それからしばらく経って
 
大人数での飲み会。
こういう場は苦手だ。お向かいの年輩の先生が
注文を取りに来た女性の店員さんに
「加奈さんっていうの。この名前の人は美人しかいないねえ」
と声をかけている。まったくもう、みんなに言ってるのかなー。
でも、先生はこれが常なんだろうし、言われる加奈さんも
けっこう常なんだんだろうな、と思った。
(あっ、先生って書いちゃった)
 
この話は直接は関係なくて
書きたくなかったんだけど、
これがあったから、
フラッシュバックした。
 
そう、彼女の名前だったから。
 
彼女はあまり食べなくて、どちらかというと
必死にスプーンで何かを口に運んでいた気がする。
 
教えてもらったたくさんの本からもらった知恵が
今の僕を、おそれおおくも生かしている。
 
青いピンヒール、特別に描きたいのは、
僕にとっては三つのテーマがあって、
儚さと美しさと強さの象徴だからだ。

永久欠番


YouTube: 「永久欠番」中島みゆき/カバーby前田泰孝(Yasutaka Maeda)

『永久欠番』ありました。

赤松貞明さんの居酒屋について

亡くなった作家のヘンリー・サカイダさんが
最も好きなパイロットが赤松貞明さんだそうだ。
 
ヘンリーさんの著書には
赤松さんは晩年はアルコール中毒で苦しんだと
書かれている。でもそれは誤解で
高知で居酒屋を経営していて、幸せそうだった。
 
最近、なんと、その居酒屋に通われていた方と
知りあうことができた。
許可を頂戴したので、もう少しで掲載できる。
 
ヘンリーさん生きていたら、 
喜んだことだろうに。
この事実を知らせられたらよかった。
あと半年早かったら。

長文に対する弁明

なおとさん、パソコンばかりに向かって、たまにリラックスできる
趣味を見つけるといいよと
アドバイスを受けるのだけど、長文を書くのが休息方法なのだ。
眠れない夜を、諦めて仕方なくテキストを書いて過ごしている。
決して仕事をさぼっているわけでない。
  
航空力学で有名な谷さんのエピソードで
糸川英夫が不眠症で悩んで相談したときのことを次のように
に書いてある。
「君、僕なんて、眠れない夜を勘定したほうが早いよ」
 
何の解決にもなっていいないのだけど
救われたような、わけがわからない。
 
だから、ピクシブ文芸で、いっぱい小説を書いている。
戦争や航空とはぜんぜん関係ないのだけど、
  
割合、僕は色々、色々なことを経験してるらしく、
苦しんでる人の何かの役に立つと思って、
いつかペンネームで出そうと思って書いている話がいっぱいある。
少しだけ、マイルドな話はこっちにうつしてはいるけれど。
書いて書いて、途中で止まっている。
 
最近は「二人の三角関係」と「永久欠番」という二篇を書いた。
「永久欠番は」中島みゆきの同名タイトルと全く同じような
内容だけど、偶然にも同じような経験のテキストで
 
「二人の三角関係」
タイトルが安直かと思ったけど、これは解離性人格性障害の話で
すごーくざっくり書くと、幼いころのトラウマ、特に
バイオレンスや性暴力が関係すると、多いような気がするけど
一人の人格がもう一人を守るようになる。
記憶がある人とない人がいる。

2019年6月 3日 (月)

NHK Eテレ、又吉直樹のヘウレーカ!

NHK Eテレ、又吉直樹のヘウレーカ!におきまして
私の撮ったレアな写真が紹介されます。
6月26日放送です。

最後のウォーバード

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堀越二郎さんが最後に手掛けた
ウォーバード「烈風」11型です。
 
八景島のはウェザリングがきついから
綺麗な状態で絵にしました。

Z期を掲げよ

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Z旗を掲げております。今週はデザインの専属契約している
某社様からフリーの期間を頂戴しまして、航空祭の連続入稿です。
 
このところの寒暖差でアシスタント桜井が体調崩しまして、
なんとか頑張る次第であります。

2019年6月 2日 (日)

声優さんと打ち合わせ

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蒼空はるか(ソライロパレット)の声優さん
四名と、東京で打ち合わせでした。
蒼空はるか役の澤崎柚希さん
@yukkyfadeout
 
市貝みさき役の飯田悠佳さん、
@yuka2185
 
渡良瀬あやか役の東雲舞さん、
@Shinonome_Mai
 
この後、時間差で、壬生つばさ役の
謝花(じゃはな)さんとお目にかかり
@yusura0901
 
最後に、氏家さくら役の高木高子さん
@SWasaviにお目にかかりコンセプトを説明させていただきましたら
いよいよソライロパレットスタートです。
 
カメラマンは波木雄介です。

僕とヤスさんの決めた「直球勝負」

Sakura

百式司偵の記事から続く。
ヤスさんは僕の想いを魂を込めて絵にしてくれる。
(キャラクターは氏家さくら。衣装デザインは入江真愛)
 
僕とヤスさんは、子供さんにもわかる、元気な王道の作品を
作ろうと決めた。時流に媚びたような変化球作品は無しでいこう。
こんな時代だからこそ、明るく元気なキャラクターを
作ろう。大切なことはブレさせない。一貫したテーマを!
そして、ストレートだけで勝負だ。それで最高に面白い作品を作ろう。
これは二人で決めた大切なルールだった。