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2011年2月18日 (金)

大戦末期、ドイツから日本を目指した潜水艦~カエサル作戦

この調査により、現場の海域で基準値を大きく上回る水銀汚染が確認され
深刻な問題となっている。付近の海域は漁が禁止され、現在でも解決に至っていない。

1944年 12月5日

一隻の潜水艦がキール軍港を隠密裏に出航した。
ナチスドイツの潜水艦、Uボート「U-864」である。

これはカエサル作戦と称され、ドイツが開発した最新鋭の
ジェットエンジン(メッサーシュミット)と
それらを学んだ日独双方の科学者、技師を
日本へ送り届ける任務であったと一般にい云われている。

アメリカによる連日の戦略爆撃に苦しむ日本にとって、ジェットエンジンを搭載した
新型の迎撃戦闘機の開発が急務であった。

しかしこの頃、ドイツは戦況悪化を重ね、ソ連軍はベルリン目前に迫っていた。
群狼戦術で恐れられたUボートも多くが沈められ勢いを失っていた。ドイツ海軍にとって
最後に残されたのが北海を抜けるルートであった。

グレートブリテン島(イギリス)北端をまわり、
その後南下、アフリカ大陸の最南端、喜望峰沖を経て、日本統治下のペナン(現在のマレーシア)
を目指す計画で、用いられたUボート「U-864」は全長90メートル、速力20ノット
乗員72名の命を預かる艦長はラルフ=ライマー・ボルフラム少佐だった。

日中は深く潜航し、しばらくは順調な航行を続けた。

12/29
艦体は大きな衝撃に見舞われる。座礁によるものであった。
幸いにも、復帰したU-864であったが、この一件により予定外の修理を迫られ
ノルウェーのベルゲン(Bergen)基地に寄港。同基地はドイツ海軍最後の要衝
であり、鉄筋コンクリートで囲まれた防空ドック「ブンカー」を備えていた。

これに身を寄せたU-864に対し、僅か数時間後、上空に英軍機が襲来。
爆撃を受ける。ブンカーの恩恵より甚大な被害こそ間逃れたものの、足止めを
一層長引かせた。しかしこの間、乗員は上陸を許され休息を得ることができた。
多くの者は、家族や恋人に充てて手紙を書き記したが、これが生きて地を踏む最後の機会となった。

全て筒抜けだったのだ。早々に暗号解読に成功したイギリスは
積荷の内容から目的地、乗り込んだ日独の科学者の氏名、カエサルという
作戦名までも掌握していた。

その情報をフェイエ島(Fedje Is)付近を哨戒中の「ヴェンチャラー」に転送する。

ヴェンチャラーはシェトランド諸島(Shetland s)ラーウィック(Lerwick)基地所属の
イギリス海軍潜水艦で、北海、北大西洋で13隻撃沈のスコアを誇り
25歳の艦長、ジミー・ラウンダーズ大尉が指揮していた。

2/6
ベルゲンを出港したU-864は、ヴェンチャラーの敷いた哨戒網の中へ突入する。
しかし、広大な海原で、潜水艦を探索することは相当に困難であり、
U-864はこれを突破。無事外洋へ出ると、喜望峰へ向け進路を取った。

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U-864を深刻なトラブルが襲った。右舷機関(エンジン)の故障である。
これによりボルフラムはベルゲンへ引き返すことを決断する。

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哨戒網の中に戻るU-864。先に気付いたのは待ち構えていたヴェンチャラーであった。
U-864の放つ僅かなスクリュー音を聴音員は見逃さなかった。ソナーを打てば確実に敵の位置を
知ることが可能だが、それは自らを曝け出す愚考でもあった。

12時12分
ラウンダーズは敵がジグザグに航行していることを知り、進路を予測、
4本すべての魚雷発射管を開くと、雷撃を命じた。
当時、潜航中の潜水艦同士で水雷戦を行った例は皆無であり、一線を画した
未来の戦法であったと言える。

接近してくる魚雷にようやく気付くいたU-864は
必死の回避を試みた。急速潜航し面舵切ったが、等間隔で放射状に放たれた魚雷が接近する。

ヴェンチャラーは4本の雷撃を終えると同時に、それらを見届けることなく深く潜航した。
今度は自らが攻撃される側となるからである。同艦の魚雷発射管は4本。
それに対しUボートは6本で一度回避されると一気に形勢が逆転する。

12時14分30秒、ヴェンチャラーの聴音員がヘッドフォンを通して水中での破壊音を確認した。
それはマッチ箱を握り潰したような音で、4本目の魚雷が命中したものと推定される。

2007年
ノルウェーの無人海底調査船により沈没したU-864の艦体が確認された。
艦体の近辺海底には水銀が入った容器が散乱しており、その数は1857個、合計60トンに及んだ。
いずれも腐食が進み、水銀が漏れ出している。水銀は、当時の産業、すなわち兵器製造に欠かせない
原料であったことから潜水艦に積載されたものと推定される。

はるか極東を目指した潜水艦U-864は、現代にも及んで重責を残しつつ海底に眠り続けている。

北海

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