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2014年6月 6日 (金)

バブル遺産めぐり

海岸に建つそのホテルは客室からの眺望が自慢で、太平洋に沈む
夕日が実に美しいという。駅前のビジネスホテルはすでに満室で
予約が取れず、しょうがないと、半分観光気分で今回ここを選んだ
のだったが早々後悔することになった。
 
まず私が訪れたその日、半島は低気圧圏内にあり、
猛烈な時化に見舞われ、しかも
ホテルの駐車場は国道に面し、それを挟んだすぐ先は海で
沖からやってきた巨大なうねりが波消しブロックにぶつかって
轟き防波堤を越えて、それが雨だか波の飛沫なのか
わからないくらいにとにかくバケツをひっくり返したように
降ってくるだった。
 
車から急いで降りて、エントランスへ駆け寄る。
丸い取っ手のガラス戸を押して開けて
ロビーに入る。広い。だけど敷かれたカーペットはすっかり褪せ、
天井に吊るされた大きなシャンデリアも
くすんで、ホコリがつもっている。
 
フロントのカウンターへ歩み寄るものの
人の気配が無いので、備え付けの受話器を取ると
しばらくしてようやく従業員が出てきてくれた。

「おかえりなさいませ」
対応は丁寧なものだったので安心する。インクがときどき途切れる
ボールペンを滑らせ、テキトーな字で宿帳を書いた。
アクリル棒がぶらさがったレトロな鍵を受け取り、部屋へ向かう。
 
お土産コーナーに吊り下げてある古い玩具やら
ご当地Tシャツ、いつからあるものなんだろう。
 
「孔雀の間」「末広の間」とかいうバブル期には派手な宴が催されたであろう
大きな宴会場の扉の前を通り過ぎて、別館へ抜け非常口の緑色のランプの
蛍光灯が切れかけて点滅する薄暗い廊下を歩いて行く。
 
今は珍しいプレハブでコイン式のカラオケボックスが置いてある。
 
これだけガラガラだもんなら、他に宿泊客はいないんじゃないかと
思ったのだけど、たまたま通りがかった客室の前に
 
「〇〇様、〇〇様」と貼り紙があり
それが別姓の男女の名前だったのでちょっと驚き
 
って、その隣が自分の部屋じゃないか!
それにしても物音ひとつしない。波と風の音以外。
 
それでも疲れを取ろうと大浴場へ。
誰もいないので、自分で蛍光灯のスイッチを探して
ようやく見つけた。
 
きついくらいの塩素の香りが漂う「温泉」に浸かる。
庭にはパターゴルフ場があって、5番ホールの旗が
千切れんばかりになびいている。
 
はやく朝になればいいのに、と思った。
 
でも、こういうホテルは全国にたくさんあって
決して、珍しくない。
交通の便が良くなったばかりに、みんな日帰りで帰ってしまう。
 
東京は若者でいっぱいなのに
地方の過疎化は深刻だ。
どうにかならないか。
 
翌日、嵐が去って、見る海は綺麗だった。

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