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2019年10月23日 (水)

呉式二号五型カタパルト(呉式二号射出機五型)

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日本海軍のカタパルトは大正末期から呉海軍工廠で研究が開始され、
昭和3年に圧搾空気式カタパルトが先に完成。5年後に火薬式カタパルトが
完成し、重巡洋艦「青葉」「那智」に初めて搭載された。
 
その後、改良を加え、呉式二号射出機三型改一となって、5,500級軽巡洋艦で
実用化された。これは90式水上偵察機や95式水上偵察機の射出が可能で、
さらに、航空機の全備重量4トンまでの機体の射出を可能に改良された
ものが呉式二号射出機五型となった。海軍でもっとも多くの艦船に
搭載されたカタパルトである。
 
カタパルト発進
 
飛行長の「発進用意」の号令で搭乗員が期待に乗り込む。
エンジンを指導し、搭乗員が「よろしい」と飛行長に
通達すると手旗用の赤白の旗をもってまず白旗を横に出す。
これが火薬装填の合図で直径およそ20cm、長さ30cmくらいの
装薬を操作室の射手が装填し、「よし」の合図を飛行長に
伝えると、飛行長は白旗を赤旗に持ち替えて真上にあげる。
 
搭乗員はエンジンを全開に吹かし待機する。搭乗員が各計器を
見て異常なしと判断し。「発射準備よし」を飛行長に伝える。
飛行長は赤旗を振り下ろす。これが発射の合図である。
 
射手は間髪入れず引き金を引く。引き金といっても
ハンドルに取っ手がついたようなもので、それを素早く一回転
することで火薬が爆発し、機体が発射される。
 
このときの最大射出速度は31.0m/秒である。
巡洋艦「利根」でカタパルト射出を経験している
田中三也さんの証言によれば、最初は身体にかかるGに堪えるのに
精いっぱいであったが回数を重ねるうちに、慣れてくる。左舷から
射出される場合、艦に衝突しないよう、カタパルトの方向を
やや外側を向ける。すると主砲付近の甲板上に、水兵が整列して
全員、某振れをし見送っている。どの水兵も同じ水兵服を着ているが、
慣れてくると、戦友の顔がわかるそうだ。感極まる一瞬である。
 
カタパルト射出には危険手当がつく。一回の射出ごとに6円の危険手当がつく。
当時の6円は当然大金である。これを搭乗員は「ポン6」とか言って喜んだ。
 
機体収容

射出は海が荒れていても可能である。しかし、着水後の機体収容は非常に
骨が折れる。海が荒れている場合、「制波揚収」といって巡洋艦はだいたい
15ノットで「主舵いっぱい」で右に旋回する。何万トンもある巡洋艦が
これをやると、丸い航跡が出来てその内側の海面は見事に波が静かになる。
 
この瞬間に機体を巡洋艦に近づけ、デリックと呼ばれるクレーンで収容する
のであるが、デリックの先端を機体に引っ掛ける作業を素早く行わなければ
ならない。これは零式三座水偵の場合階級に関係なく、真ん中の搭乗員が
風防の上にまたがって、ひっかけるのである。(二座の場合は後席搭乗員の
役目となる)波に揺られながら、これを成功させる作業は至難であった。
もたついていると制波揚収の効果が薄れてきてしまう。
 
一方、巡洋艦のほうでは水兵が機体と艦が衝突しないように、長い棒を
もって機体をつつく作業が続く。この間、搭乗員が海面に落下してしまう
事故も多かった。そうした苦労を経てやっとフックを引っ掛けると、
巡洋艦に収容されるのである。

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