疾風のプロペラ設計技師の関口博士が願った平和
四式戦「疾風」のプロペラを持たせてもらいました。
ズッシリ重いです。これを2000馬力のエンジンで四枚回すのですね。
色も当時のままです。
なぜ、疾風からプロペラの構造を変えたのか?
少しだけ専門的なことを書きますが、
なるべくわかりやすく説明したいと思いますので
よかったらご覧ください。
零戦など、日本機のほとんどは「ハミルトン式」という
プロペラを使っていました。故障も少なく構造も
シンプルで非常にすぐれたプロペラでした。
ところが、「疾風」のプロペラの主任技師だった関口博士という方は
疾風から「ラチェ式」という新しい電動の制御方法に変更することを
提言したのです。ハミルトン式でも充分な性能を得られたといいますが
なぜ、リスクとコストをかけて新しい技術を導入したのでしょうか。
関口博士は、現在当たり前に行う旅客機の着陸時の逆噴射(ブレーキ
の代わりとして、疾風のプロペラを逆方向に回転させ、
制動距離を短くする設計思想を実現に向けたわけです。
ハミルトン式はプロペラを反対に回す技術が
未熟でしたが、ラチェ式はそれが可能でした。
関口博士は
戦争が終わって、将来の民間航空の実現を既に
視野に入れていたのです。
大勢の乗客を乗せて飛ぶ旅客機は着陸したとき、重いので
なかなか止まりません。ですから長い滑走路が必要になります。
そこで、プロペラを逆に回してブレーキをかける必要があるのでした。
飛行機屋は純粋です。
軍から言われたことをやるだけです。
戦争したいと思う人など誰一人いないでしょう。
だから関口博士も今は戦闘機を作っているけれど、
あえて、面倒なラチェ式を採用したのは、それを応用して
いつかは、誰もが平和な大空を飛べる時代が来る、
そう思っていたのかもしれません。
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