テレビ東京「池上彰の戦争を考えるスペシャル」
2012年8月12日放送に於いて私もよく知る元憲兵の磯部喜一さんが
出演しインタビューに答えていましたので、この放送について
私の感想を少し書くことにします。
磯部さんからは、ビルマで戦ったご自身の経験から
英霊の弔いを続け、二度と戦争を起こしてはならないと説いています。
前回のパラオ取材の折にも激励のお手紙やお電話頂き
お互いのテレビ出演を楽しみにしておりました。
本題に入ります。
ご本人からのお話によると
インタビューは2時間を費やしたそうですが
放送は1~2分でした。
記者の
「強い仕打ちをしたことはあるか」
との質問に対し磯部さんは
「一度だけあります」
と体罰を行った事を正直にお答えになりました。
しかし、長い憲兵さんの任務中、それは後にも先にも一度だけでしたし
以下に述べるような背景があったのです。
憲兵は軍の警察組織ですから、法に基づいて
民間人を保護すること、また軍規を乱す者を取り締まることが
目的でありました。ドラマなどではいつも悪役なので、
残念でなりません。今回もその誤解を払拭できるものと信じておりました。
しかし私や磯部さんの思惑とは逆に、憲兵イコール悪者といった図式を
重ねて視聴者に植えつけただけで終わってしまったことが残念でなりません。
磯部さんはなぜ、体罰を行ったのでしょうか。
それは徴兵検査の折でした。戦局が身に迫って、身内からも戦死者が
出るようになり国民が一丸となって戦っている最中でした。
検査会場に髪を伸ばし、だらしない態度で現れた面々が居たのです。
自らは戦争に行きたくない、さらに他を嘲笑するような態度でいたのですから
「お国の為に」と言って散っていった者たちを思えば、磯部さんが
憤慨する気持ちは人間として当然とも言えます。私は以前からこの話を
ご本人から聞いており全容を理解していたのですが、テレビ東京さんは
2時間のインタビューの中でたった1~2分間
「体罰をした~許せなかった」の部分だけを切り取って
放送したのです。これには閉口しました。
テレビ東京「池上彰の戦争を考えるスペシャル」は
そもそもインタビューする気持ちなどなかったのではないでしょうか。
番組には台本があって、それに都合の良いセリフを
集めて埋め込んだけのように思えます。磯部さんは
「インタビューが採用されるかどうかは池上先生の考えによる」
という前提で取材に応じていたことを明らかにしています。
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