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2013年3月20日 (水)

硫黄島 遺骨収容

硫黄島 遺骨収集
 
 
 遺骨収容現場は砂漠地帯の岩山、えぐるような崖下の壕で頭上には艦砲
射撃の跡や弾痕が著しく、無数に残っている。埋もれた壕の入口のみ重機
で開削し、あとは全て手作業で掘り進める。天井の高さは百三十~百四十
センチ。私たちは中腰となり壕の中を駆け回り、土砂を次々リレーし排出
した。奥へ掘り進むほどに暑く、作業先端の温度は七十度ほどになる。握
りしめた砂は熱く、汗が流れ落ちる。硫黄島は地下要塞化されており、最
も長い壕は全長千八百メートルにも達する。過去に死亡事故も発生してお
り一度入ると方向感覚を失う。今回、私たちが作業を行う壕は二百メート
ルも無い上、縄梯子をかけるような高低差もないので、これでも至極楽な
方と言えよう。
 先端を掘り進む作業員はおよそ五分置きに交代となり、一旦外に出て水
分補給と体のクールダウンを行う。その都度、外の光が見えて、涼しい風
が吹き込んでくる。艦砲射撃も火炎放射も無い。そこで待っているのは心
地よい潮風だけだった。この岩山の高台からは黒い砂浜と監獄岩を望む。
 
                             銃剣は光り輝く
 
 私が英霊に後ろめたさを感じながら水をガブ飲みしている隣では搬出さ
れた土砂を別の係が丁寧にふるいにかけている。小さなお骨を見逃しては
なるものかと皆、目を皿のようにして小さなお骨を探している。同時に発
見された遺留品の数々が積まれている。真空状態にあったので、時間の経
過が遅い。飯盒、水筒、ガスマスクなどが最も多く血染めの軍服がある一
方、新品同様、店の棚に陳列されていても不思議はない綺麗に洗濯され畳
まれた毛布などもある。
 歩兵の化身とも言えよう、銃剣の鞘を抜くと、今なお最後の突撃に備え
るべくその先端は鋭く光り輝いていた。衛生兵の薬瓶、ステンレス製の鉗
子は錆びることなく、そのまま開くことができた。重機関銃は、弾を装填
すれば射撃が可能ではなかろうか。一切の劣化なく眠っていた。徹底抗戦
は終わらない。四十発ほど出てきた手榴弾は九七式、九九式が半々くらい
で混在し、いずれもピンが抜けていて不発のようである。兵隊さん、この
手榴弾をどんな思いで握りしめていたのだろう。壕内部は暗闇でよくわか
らなかったが、私が土砂を排出していると一緒に対戦車地雷がゴロンと出
てきたのには驚いた。
 基地司令の視察があった。壕の一番奥まで入って頂いたようだ。
次に紹介するのは司令の訓示である。
 
「昔の兵隊さんは、こんな暑い中で壕を掘って大変だったなと思うよりも
これだけの事が成し遂げられたんだ、是非そう考えてください」
今回の遺骨収集では合計七柱を収容した。


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