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2016年4月30日 (土)

迷彩零戦は存在したか

迷彩零戦

ハセガワから第261海軍航空隊(虎)の迷彩仕様零戦が販売されていたが
実際にこのようなカラーリングが存在したか、考察してみる。
上は完成見本。下に掲載した書物は
『世界の傑作機No.9零式艦上戦闘機22-63型』で、
(平成4年発行。絶版)第261海軍航空隊(虎)、第263海軍航空隊(豹)
零戦にはハセガワの模型と同様に迷彩が施されている。
 
中島飛行機で生産された機体は工場出荷時には単色であったが、
最前線基地であるペリリュー、大宮島(グアム)、サイパン、ヤップへ
派遣された後、激戦地であるが故に迷彩が施された、という推定だ。
 
第261海軍航空隊(虎)はサイパン島、アスリート飛行場を拠点に
そして第263海軍航空隊(豹)は大宮島(グアム)を拠点に連日
激しい戦いを展開し、絶対国防権の死守に努めていたが
マリアナ沖海戦で戦力の大部分を消耗、戦死した。
そこで生存していた僅かな搭乗員はを第201海軍航空隊へ編入。
フィリピンへ後退した。

迷彩零戦

箱絵も迷彩が施されている。

迷彩零戦

この二つの部隊の零戦は、以下の写真を参考にしたと思われる。
 

ゼロ戦鹵獲機

▲アスリート飛行場に残された第263海軍航空隊(豹)の零戦五二型。
サイパン上陸後、米軍が撮影。
 
サイパン島アスリート飛行場には、米軍上陸時、保存状態の良い
ゼロ戦(第261海軍航空隊と第263海軍航空隊所属機)が多数残っており
米軍はこれを鹵獲。戦利品として、米国本土へ
持ち帰ることを決めた。
 
現在、カリフォルニアのプレーンオブフェイムで動態保存されている
ゼロ戦はこのとき持ち帰った第261海軍航空隊のうちの一機というのは
有名な話である。数年前、この零戦が所沢へ里帰りした折に、マスコミから
「あれは誰が乗っていた飛行機か?」と私へ問い合わせがあった。

ゼロ戦鹵獲機

▲アメリカの軽空母に搭載され本土へ運ばれる第261海軍航空隊と
第263海軍航空隊の零戦五二型。

ゼロ戦鹵獲機

▲尾翼の番号(テールレター)の頭文字が8と刻まれているのが
263空で、61が261空の所属機。

ゼロ戦鹵獲機

ゼロ戦鹵獲機

こうして観察してみると、迷彩塗装が施されたゼロ戦のようにも見えるが
翼の日の丸に注目してほしい。モノクロ写真であれば、日の丸の
赤は、もっと濃い色に映る筈だ。そして、胴体の日の丸とは
濃さが違っている。
 
ここの海域は日米双方にとって、最前線であり、いつ奇襲を受けるか
わからない。敵味方の識別が現代のように出来なかった時代、
高高度から見れば、甲板にズラリと並んだゼロ戦、これは
まるで日本の空母である。誤爆でも受けたらたまらない。米軍は
大急ぎで鹵獲機の日の丸をシンナー等の溶剤で落としたのではないか?
だから日の丸が白く写っている。
 
そして、脱色した後、米軍の星のマークを描き入れたのだと思う。
もちろん、溶剤は日の丸だけでなく、機体の色も落とす。

よく観察すると、機体の迷彩というかマダラは
この溶剤がタレて、滲んでいるようにも見える。
(ならば、必要のない尾翼のほうにもなぜ溶剤をかけるのか?
これはこれで謎だが)

 
そして、日本側パイロットの証言だが
第263海軍航空隊で開隊から終焉まで戦った
笠井智一さんによれば、特に迷彩塗装は施されていなかった、
とのこと(篠原インタビューによる)
 

迷彩零戦


そういった具合で、第261海軍航空隊第263海軍航空隊

迷彩仕様の零戦は存在したのか?実際のところはわからないが
以上のように、証明するものがないし、矛盾点が存在することも確かである。
 
最後に申し上げたいのは
歴史の考察には色々な意見があるから面白いと思う。
そして、模型を作る際には、色々想像しながら楽しくやろう!
 
結論!自分の好きな色で塗ればいいと思う!!
 
 

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コメント

零戦に限らず、戦線が拡大すると各地で応急的な迷彩や装備の改造などがありますからね。自分もPHP文庫の零戦関連の文庫(書名失念)で現地で簡単に塗装された機体の写真を見たことがあります。
もしかしたら、上陸前に隠そうとして日本側で溶剤か重ね塗りをしたり、逆に鹵獲した米軍が指示ミスか何かでやらかした可能性もありますねw
迷彩とは違う話になりますが、「芙蓉部隊」を扱った光人社NF文庫の「彗星夜襲隊」ではどうも指揮官クラスだと隠蔽などに意識が向かない人もいたようで、フィリピン戦あたりでもバカ正直に最前線基地で列線を作って並べたせいで空襲で保有機を失う事例もあったそうです・・・・・・。

金澤さん
応急迷彩は色々なパターンがあって、興味深いですね。
外地での使用機体は剥がれも激しく日の丸を塗りつぶしたのが一般的ですが
内地でも九州の部隊は外地の部隊に近いものを感じます。

失礼致します。

 旧日本海軍機の日章の赤色は昭和4年頃からリソールレッド(リトール赤、Lithol red)と呼ばれるレーキ顔料(有機顔料)を使用していました(それ以前は無機顔料の、恐らくはバーミリオンが使用さたと思われます)。
レーキ顔料の例に漏れず色は鮮やかでしたが、耐光性では無機顔料に劣りました(当時の赤色顔料の中では、ヘリオレッドよりも弱く新洋紅よりも強い耐光性でした)。但し、海軍の規定上では「2ヶ月間大気中に暴露するも殆ど変色せざるを要す」とされていました。
リソールレッド・レーキは体質とする塩基に種類が有り、日本海軍ではバリウム塩の物を使用していた為、カラーインデックス (Colour Index International, 略称 C.I. ) では、Colour Index Generic Name PR49:1(Barium Lithol Red)が、それとなります。

【参考資料】
海軍造船造機造兵主要材料試験検査規則. 航空機之部
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1112346
エチル纎維素塗料に就て(第一報)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1898/33/10/33_10_1111/_article/-char/ja/
ベンヂル繊維素塗料に就て
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1898/35/2/35_2_167/_article/-char/ja/
Color of Art Pigment Database
http://www.artiscreation.com/Color_index_names.html

失礼致しました。

失礼致します。

サイパン島、アスリート飛行場の零戦とは全く関係無い話かもしれませんが、日本海軍には「航空機用迷彩ペイント」という塗料が有りました。

 太平洋戦争開戦前後の日本海軍航空機の機体塗装は、軽金属面にベンジルセルロース塗料の「軽金属用特殊塗料[ち49]」、羽布面にアセチルセルロース塗料の「羽布塗料[ち8]」を塗装するのが普通でしたが、この他に迷彩塗装用の塗料として「航空機用迷彩ペイント仮規95[ち57A]」という塗料が有りました。
この[ち57A]は3種類のセルロース塗料の総称で、第1種はニトロセルロース塗料(繊維素エステル系)、第2種はアセチルセルロース塗料(所謂ドープ)、第3種はベンジルセルロース塗料(繊維素エーテル系)・・・と、同じ[ち57A]という種別に分類されながらも、その組成(ベヒクル)は異なる物でした。
この3種は夫々に使用方法が異なりますが、第1種においては、軽金属用特殊塗料及び羽布塗料塗装面上に塗装して使用する物であり、酢酸ブチルを使用して除去可能な塗料でした。酢酸ブチルはニトロセルロースの代表的溶剤(シンナー)ですが、アセチルセルロースとベンジルセルロースを溶解できません。この事は、[ち57A]第1種が元の塗装面を損なう事無く除去可能な事を意味します(アセトンでも除去可能でしたが、アセトンはアセチルセルロースを溶解してしまいます)。
「航空機用迷彩ペイント仮規95[ち57A]」の色彩と光沢は運用の指定により、塗装は刷毛又は噴霧器(スプレー)によって行われました。
どの様な場所で、どの様な色の[ち57A]が使用されたかは分かりませんが、概ね、その土地の土や植物など風景に合った色が使われたのは間違い無いでしょう。

【参考資料】
海軍造船造機造兵主要材料試験検査規則. 航空機之部(1938)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001789493-00
「日本塗料工業史」日本塗料工業史編纂会編(1953)
「塗料辞典」修教社書院(1942)

失礼致しました。

LUNA様
コメントありがとうございます。
大変興味深い内容をありがとうございます。

マニアックすぎる内容を書いてしまったので
どなたも見てくださらないと思っていましたので
嬉しいです。塗装は本当に奥が深いですね。

現在はコンピューターでCMYKで簡単に色を調合できますので
これらを実際にビジュアル化してみたいものです。

「炎の翼」という本に迷彩塗装のゼロ戦の写真があります。
模様は隼のそれに近いものですが、モノクロ写真の割にはっきりとしています。
ご参考までに。。。

HOGE様
ありがとうございます!
早速探してみます。

昔、『丸』のムック(零戦)で、「機体の退色に塗料が追いつかなかくて、結果的にまだら塗装の機体が存在した。」と読んだ覚えがあります。「数カ月の内に褐色に退色してしまった。」とも書いてあったような気も…。

鷹城様
コメントありがとうございます。
塗料が足らなくなったといいますと
ラバウルの応急迷彩の事かもしれませんね。

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